山 行 報 告
2010/5/2〜4  北ア・明神岳東稜 メンバ:大高ぁ、大高ゅ、鈴木、中島  記録:大高ぁ、鈴木




【コースタイム】

(5/2
0:00瀬谷駅=つきみ野駅=中央道=松本IC=4:30沢渡駐車場(泊)5:50馴染みの名鉄タクシー中沢さん=6:20上高地駐車場6:40−7:30明神7:40―養魚場跡地8:00―10:00宮川コル10:20−11:15ひょうたん池(テント泊)

(5/3
2:30ひょうたん池4:30―6:50バットレス手前コル7:10―8:50明神岳主峰―9:00二峰手前コル10:00―11:25五峰手前コル11:40―12:15五峰テント場(テント泊

(5/4
3:40五峰テント場5:15―7:10岳沢合流点7:20−8:10上高地駐車場8:30=馴染みの名鉄タクシー中沢さん=8:50沢渡駐車場=松本IC=中央道=富士五湖=都留IC=国道35=秋山温泉=相模湖駅(解散)





【記録-1】

2日(日)
 二年連続で焼岳に行く時にお世話になった名鉄タクシーの中沢さんに予約すると、「おう、こないだの人かね。6:30に待ってるダニー。」と松本弁で快諾。

 これで行く準備はOKになった。天気も連休中は晴れ続きの近年まれにみる予報。後は左腕の50肩が心配なだけだ。鈴木・中島の若手コンビが頼もしい。中年のW大高も頑張らねば!

 沢渡の駐車場はやはり満杯。ひと月前の焼岳の時には5台くらいしか止まっていなかったのになあ。中沢さんのタクシーの大黒様に登山の安全をお祈りし、快晴の明神へ進む。

 明神から人の流れをはずれて養魚場へ。しかし養魚場入口を猿の集団が占拠。ボス猿が威嚇して入れてくれない。

 ほかの入口探すがだめ、意を決してかみさんが先頭を行くと、以外にもボス以下軍団は目をそむけて知らん顔。さすがである。これが本日の核心部であった。 

 ひょうたん池までのルートは赤布と先行のトレースがありわかりやすかった。宮川のコルもひょうたん池も、明神から見た通りの場所であった。

 上宮川谷はすでに雪が落ちきった感じで、雪崩た後を行く。ひょうたん池に早く到着し、バットレスの基部まで行くか迷うが、先行の2人パーティーにさらに上部に人が望まれたため、ひょうたん池泊とする。

 養魚場から一緒になったご夫婦づれも一緒になる。旦那は冬も来たことがあるとのことなので、情報をもらう。鈴木さんは、連休中にひょうたん池にクマが出没した過去の報告を読んだらしく怖がっていた。

 若者二人は、上部の偵察へ。中年二人はテントで水つくり。結局クマも後続のパーティーも現れなかった。風もなく快晴でぐっすり寝ることができた。快適な場所である。

3日(月)
 予定通り2:30起床。朝焼けが美しい。4:30出発。第一階段はロープを出さずに行く。

 鈴木さんによると本日の核心であったらしく、あとで何回も聞かされた。その上の雪稜も絶景の景色。しかし先行パーティーはよく昨日の午後のぐずぐずの雪の中をロープもつけずに登って行ったものだ。やはり昨日行かなくて正解だった。

 超軽量化した鈴木さんと体力のある中島君はぐいぐい高度をかせいでいく。圧倒された。バットレス手前のコルは整地すれば4天は4張りはれるほど広い。まだ昨日先行した2人パーティーと単独のおじさんが出発の準備をしていた。

 まず先行の2人パーティーがバットレスを越える。続いて我々とご夫婦。先を譲った単独のおじさんは最後であった。単独のおじさんとその後会わなかったがちょっと心配になった。

 バットレスは鈴木さんが軽々とリード。中島君は難しい直上で来る。8m弱の短い4級程度の岩場であった。その後腐り始めたざらめ状の雪をステップを蹴り込んでスタンスを作りながら登る。私は最近このぐずり雪が極端に怖くなった。

 主峰からは、前穂の頂上から奥明神沢を下降するたくさんの人が見えた。主峰から奥明神沢下降への稜線もトレースがあり、ルートも行きやすそうであった。二峰手前のコルは、4天が二張り張れる広さがあった。

 二峰の登りは、先に上から懸垂で降りるパーティーを1時間待った。頭大の落石にビビる。ここは、中島君と大高ゅがリード。3級−で20m程度の楽しいクライミングであった。その後は360°のパノラマを眺めながらの稜線漫歩。

 五峰の手前に4天2張り程度のコルがあった。日本のクラシックルートの地図には広い台地でビバークサイトとなっているが、五峰を越えたビバークサイトの間違えであろう。五峰を越えて素晴らしい幕営地に到着。

 ここでも時間が早く下山するかどうか迷うが、泊まることにした。ご夫婦もここに泊まる。360°のすばらしい眺めだ。上高地からもよく見える場所であった。

4日(火)
 天気は良いが風が一晩中強く、テントの張り直しに一度起きる。下山路は昨日会ったパーティーのトレースと赤布を頼りに下る。

 途中岩稜帯がでてきたため、時間節約と前明神沢が下に望まれることでもあるため、ルートを外れて沢を下降することにした。なんということはない斜度で、グリセードで快適に下れる状態なのだが、雪が腐っていることもあり、ロープを出して二回懸垂下降する。私だけがびびっていた。スキーなら快適な斜度なのだが・・。

 前明神沢にはカモシカがゆっくり歩いていた。岳沢に合流し、携帯で中沢さんにタクシーの予約をする。一時間後に待ち合わせをし、時間通り1時間で上高地に到着して、すぐに帰ることができた。途中渋滞が予想されたため、いっきに中央道を走り抜け、秋川温泉で体の垢を落とす。

 天気好く、ルート良く、メンバー良く、雪もあり、行く前のびびりとは裏腹に楽しめた。また、今回鈴木さんの荷物の軽量化は大変勉強になった。やればあれだけ軽量化が可能なのである。
                                 【大高ぁ 記】



【記録-2】

5/2(日)
 1時間半ほどの仮眠で06:00過ぎに沢渡の駐車場を出る。普段なら眠くて間違いなく機嫌が悪いが、今日はそんなことはない。

 待ちに待ったバリエーションで、しかも文句などつけようもない好天の幕開けだ。3月からGWに何処か行きたいとトレーニング山行ばかりしていたので、やっとバリらしいバリが出来ると思うと、鎖を外された犬のようなもので、あっちでもこっちでもどこでも良いから、走り回りたい気分だ。 興奮してフガフガと鼻息の荒い自分を落ち着かせつつ、06:40上高地を後にする。

 最近やたらめったら山を走りまわっているお陰で、腰痛が酷い。ボルダーの最中に着地に失敗して傷めた足首も2カ月以上調子が悪い。

 ということで、とことん軽量化することにした。共同装備と個装と贅沢にダブルアックスを加えて、フル装備15Kg切っていたのではないかと思う。

 今年のGWは剣に行く知人が多く、1パーティは黒部横断、もう1パーティは八ツ峰上半部を含めた縦走をしているが、4日以上の行程でどちらも50Lザックで行っている。大高さん祐美さんは感心してくれたが、私もまだまだ軽量化できる余地はありそうだ。

 明神館までは寝ながら歩いても、1時間あれば余裕で着く(中島くんはひょうたん池まで寝ながら歩いていた…)。調べた通り、明神池の右岸へ渡る橋を渡り右に折れると、すぐに左手に養魚場の跡地を見つける。

 この養魚場跡地へ入って宮川谷へ取付くのだが、その前をサルの群れが占拠していて、ボスが威嚇をしながら姿を現した。他の道がないか探し回るが、良い突破口が見つからない。どうしたものかとウロウロしていると、業を煮やした祐美さんが先陣をきり、ボスザル以下の集団に特攻隊のごとく突っ込んでいく。

 残りのメンバーも、慌てて後を追う。すると… サルの群れは逃げることもなく、一斉にプイッ、プイッと顔を背けたり、目隠しし始めた。こちらと目を合わせないようにしているのだ。サルの習性なのだろうか。手のひらサイズのチビ猿も親の真似をして、一生懸命顔を背けている。でも我慢ができないらしく、ときどきこちらをチラ見しているから目が合った。ん〜!!かわいい!!

 つかまえて持って帰りたい衝動に駆られたが、そんなことしたら数十頭から猛攻撃を受けるだろうから、チビ猿に未練を残しつつお別れする。

 養魚場からガレた下宮川谷を30分ほど詰めると、右手から支沢が現れる。予習した通りなので、何ら迷うこともなく支沢に入る。
 支沢を更に30分ほど上がると、正面の景色が開け始め、どうやらじきにコルらしい。更に30分ほど高度を稼ぐと、1950m付近で宮川尾根のコルに着いた。宮川のコルからは、明神東稜取付きのひょうたん池のコルが一目瞭然だ。

 ほとんど落ちきったデブリが多く残る上宮川谷の広大な沢筋をトラバースし、ひょうたん池のコルまで長七の頭直下の岩壁に沿ってやや直登ぎみに、ラッセルを交代しながら進む。2300m地点のひょうたん池のコルには、11:15に到着した。

 まだ昼前なので、大高さんはラクダのコルまで前進しようかどうか、思い悩んでいる。祐美さんは、このテン場が気に入ったようだ。中島くんは…朝からずっと寝ている…。私は前進しても留まっても何をしても楽しいので、大高さんのご判断にお任せする。

 先行がいたので幕営地が確保出来ないリスクを考え、本日の幕営地は予定通りひょうたん池になった。テン場には宮川谷からずっと一緒のパーティ1組だけで、静かで快適なうえに、絶好のロケーションだ。ほとんど寝ていないこともあり、早々と就寝し翌日に備えることにする。

5/3(月)
 2:30起床、撤収を済ませ、04:30ひょうたん池を出発する。いよいよ、東稜に取付く。もうすっかり明るいので、ぱっくりと口の開いたシュルンドに注意しながら、正面の第一階段を目指す。

 第一階段下部は、文字通り階段状の凍った岩と草付きだ。大高さんはノーザイルで上がっていく。第一階段下部は前日に中島くんと偵察済みなことと、早朝で草付きも凍っていてアックスも利きそうので、ノーザイルで行けそうだ。

 大高さんの後を付いて上がっていくと、くの字に曲がった第一階段上部で、まんまとハマってしまった。かなり急な雪壁になっている。雪は締まっていて、信頼出来るブッシュもある。見事なステップまであるので、冷静に登れば問題はないはずだ。だが真後ろがスッパリと切れ落ちていて下が全くなかったので、しくじったらお終いだ。

 最初のステップに乗り上がる為にダブルアックスで体を大きく持ち上げるのに踏ん切りがつかず、しばらく手こずってしまった。今回の山行の核心になった。悪場を通過した後は、痩せた傾斜の強い雪稜を、ダブルアックスでぐんぐん高度を稼いでいく。ダブルの快適さと言ったら…これだけは軽量化しなくてよかったと心底思った。

 ラクダのコルまでは休める場所もないので一気に上がり、大高夫妻を待つ。思っていたよりも広く、雪稜を切れば4テン4張いけそうだ。まだ06:30で、2パーティとも出発前だった。しばし休憩して、いよいよバットレスに取付く。

 先行と同様、1ピッチ目はノーザイルで通過。いよいよ核心のバットレスだが、壁自体は寝ていて、高さは10M程度だ。大高夫妻・中島くんに譲ってもらいリードするが、上部はうまくムーブが探せず、スピード優先でA0で乗り上がった。

 終了点でロープをしまい、だいぶ雪が緩んできたので、最後の雪壁になっている主峰頂上まで、注意しながら一気に駆け上がる。

 明神岳頂上はさすがに景色も良く、前穂にはたくさんの人の姿が見えた。吊尾根が圧倒的な存在感で目に映り、頭の中に飛び込んできた。もう少し見ていたい気もしたが、風も強いので2峰への下りに取り掛かる。

 急なガレ場を注意して下降すると、主峰と二峰の間のコルに下りる。休憩もそこそこに、2峰直下の岩場に取付くべく登攀準備に取り掛かるが、入れ違いに懸垂で下降してくるパーティがあり、しばらく待たされる。待たされている間に、落石まで落としてくれた。

 今度は、中島くんがリードする。ガバが多いのでホールドやスタンスには困らないが、登ってみると見た目より傾斜が強く感じられたのと、20メートル以上ある高度感がスリリングだった。高さはないがのっぺりとしてホールドやスタンスの乏しいバットレスとは、対照的な登攀だ。

 2峰から3峰・4峰と、下りは岩が出ていて微妙なクライムダウンをする箇所もあるが、残雪期ならではの雪稜歩きを満喫する。5峰の最後の登りは、若干しんどかった。5峰を超えた台地2580mの地点が、本日の幕営地。

 12:15とまだお昼なので今日中に上高地まで下山できそうだが、この場所からの展望が圧巻なので急いで帰るのも勿体無いなく、もう一日遊んで帰ることにする。風の通り道らしく、夜中にはテントが煽られ、何度も目が覚めた。

5/4(火)
 3:30過ぎに起床、テントを撤収して05:15に出発する。前の日に大高さんが下り口を確認してくれていたので、トレースと赤布を頼りに下山する。

 ブッシュの根っこにアイゼンを引っ掛けそうになったり、樹林帯で日陰だからか急な下りにべっとりと厚い氷が張っていたりで下降路はあまり快適ではない。忠実に西南稜を辿る予定だったが、途中岩の痩せ尾根の先が切れてしまい面倒になってきたので、右手の沢を下降し、前明神沢から岳沢へと合流する。

 07:10岳沢合流点を出発し、08:20無事に上高地へ下りる。上高地からは、テントサイトだった5峰の台地が良く見えた。
                              【鈴木 記】